月曜の朝、通勤電車の中でスマホを開いた。満員電車に揺られながら、誰とも目を合わせたくなくて、ただ画面だけを見つめていたかった。おすすめ欄に出てきたのが『コミュ障、異世界へ行く』。……タイトル、私のこと呼んでる? いや、私はコミュ障というより「コミュニケーションに対するやる気がゼロ」なだけなんだけど。でもこのタイトル、なんか妙に引力がある。電車の中で親指一本でタップした。
読み始めて気づいた。これ、やばい。降りる駅を一瞬忘れかけた。コミュ障の主人公が異世界で必死に生きてる姿が、朝の満員電車で誰とも話したくない私の心にグサグサ刺さってくる。チート能力なし、パーティーも組めない。なのに召喚獣と一緒に戦うしかない。なにそれ、人生じゃん。
結局その日は仕事中もずっとソワソワしていた。昼休みにトイレでちょっとだけ続きを読んだのは内緒。帰りの電車でもまた読んだ。タナカ課長の「もうちょっと周りとコミュニケーション取ってね」という小言が、この日だけは全く効かなかった。だって私、異世界で頑張ってるジュンペイに感情移入してたから。
今日のユウのため息 ── SNS疲れ・他人との比較 ──

…まあ、愚痴はこのへんにして。今日の本題いくわ。
作品情報 ── コミュ障、異世界へ行く

| 作品名 | コミュ障、異世界へ行く |
|---|---|
| 作者 | 山下将誇, 宇上貴正 |
| シリーズ | コミュ障、異世界へ行く |
| ジャンル | ファンタジー |
要するにこういう話だ。生まれながらのコミュ障である主人公・ジュンペイが、28歳で命を落として、生前ハマっていたゲームの世界に転生する。ここまでは「はいはい異世界転生ね」って感じなんだけど、この作品のミソは、チート能力がないこと。普通こういうのって、転生した瞬間にとんでもないスキルもらえたりするじゃん。ジュンペイにはそれがない。
しかも「コミュ障」っていう、ある意味最大のデバフを抱えている。冒険者って基本パーティー組んで活動するものなのに、人と話せないからソロで行くしかない。生活費を稼ぐために召喚士として冒険に出るんだけど、ゲームと違って命がかかってる。ゲームの知識はあるけど、実際の戦いは全然別物。
一行でまとめると、「チートなしのコミュ障が、召喚獣だけを頼りに異世界で泥臭く生き抜くバトルファンタジー」。……28歳、コミュ障、ぼっち。なんか他人事じゃないんだよな。
見どころ①:チートなし、仲間なし、あるのは根性だけ——この泥臭さが沁みる
異世界転生ものって、だいたい主人公が最初からめちゃくちゃ強かったり、チートスキルで無双したりするパターンが多い。それはそれで気持ちいいんだけど、この作品はそういうのとは真逆を行ってる。ジュンペイにはチート能力がない。パーティーを組む相手もいない。あるのは「ゲームの知識」と「召喚獣」だけ。この手持ちの少なさが、逆にたまらなくリアルに感じる。
あらすじを読む限り、ゲームの世界に転生しているのに、ゲームとは全く違う「命を賭した過酷な戦い」が待っているらしい。これ、すごく良い設定だと思った。だって「知ってるはずの世界なのに通用しない」って、まさに新入社員のときの気持ちじゃない? マニュアル通りにやってるのに全然うまくいかない、あの感じ。ジュンペイが直面してる困難って、形を変えた「社会の洗礼」みたいなものなのかもしれない。
そして「召喚士」というクラス設定がまた絶妙。コミュ障で人と組めないから、代わりに召喚獣と一緒に戦う。人間とは話せないけど、召喚獣となら一緒にいられる。この設定、ペットに話しかけるタイプの独り身にはブッ刺さるやつだ。私も実家の猫にだけは本音を言えるタイプなので、ジュンペイの気持ちがなんとなくわかる気がする。
この作品は「強くてかっこいい主人公」じゃなくて、「弱いけど必死に足掻く主人公」を描いてるっぽくて、そこがいい。泥臭くて、不器用で、でもやるしかないから立ち向かう。異世界転生ものの醍醐味って、爽快な無双だけじゃなくて、こういう「地べたから這い上がる」タイプにもあるんだよなあ。
見どころ②:ジュンペイ、お前は私だ
主人公のジュンペイ。28歳、コミュ障。この時点でもう親近感がすごい。私は30代の事務職だけど、コミュニケーション能力に関してはジュンペイと大差ない自信がある。会議で発言を求められたときの「えっと……あの……」感とか、飲み会で誰に話しかけていいかわからなくて端っこでドリンクメニューをずっと見てる感じとか。ジュンペイ、たぶんそういうタイプでしょ。わかるよ。
あらすじを読む限り、ジュンペイは召喚獣と一緒に戦っていくらしい。人間のパーティーメンバーじゃなくて、召喚獣。ここがすごく気になるポイント。人と話せなくても、別の形で「仲間」を得ることはできるっていうのが、なんかこう……希望っていうと大げさだけど、「それでもいいんだ」って思える。職場で浮いてても、自分なりのやり方で居場所を見つけていく姿に、勝手に自分を重ねてしまう。
タナカ課長はよく「チームワークが大事だ」と言うけど、ジュンペイみたいに「人と組めないなら組めないなりの戦い方がある」っていうのを見せてくれるキャラって、私みたいな人間には本当にありがたい。あと、この手の作品って、たぶん旅の中で少しずつジュンペイに関わってくるキャラが出てくるんじゃないかなと想像してるんだけど、コミュ障が不器用に誰かと繋がっていく過程って、見ていて胸がぎゅっとなる。そういう展開があったらいいなって、勝手に期待してる。
見どころ③:レベル1から始める地獄の実戦——この成長バトルが脳に効く
この作品はバトルファンタジーとしての面白さが核にあると思う。チート無双じゃないからこそ、一つひとつの戦いに緊張感がある。ゲームの知識はあるけど実戦は別物、という設定は、「知識だけじゃどうにもならない壁」をちゃんと描いてくれそうで、バトルの見応えに直結している。召喚獣との連携でどうやって強敵を乗り越えるのか、限られた手札でどう切り抜けるのか——こういう「頭脳戦」「工夫」の要素がありそうなのが、読んでいてたまらなく気持ちいい。
ジュンペイが「成長していく」物語だというのも、バトルものとしてはご褒美みたいなやつだ。最初は弱くて、失敗して、それでも少しずつ前に進む。そのプロセスを見守る快感って、RPGで自分のキャラをコツコツ育てるのに似ている。派手なチートで一撃必殺、よりも、泥まみれで勝ち取った一勝のほうが、達成感があるに決まってる。
……まあ、現実の私はレベルアップのかけらもない事務作業を毎日繰り返しているだけなんだけど。だからこそ、ジュンペイが困難を乗り越えて少しずつ強くなっていく姿に「うおお」ってなるんだと思う。ページをめくるたびに「次はどうなる」って気になって、結局また夜更かし。でもまあ、爽快なバトルを読んだ翌朝は、ほんの少しだけ足取りが軽い……気がする。気がするだけ。
見どころ④:コミュ障でも戦える。そう教えてくれたのは異世界だった
会社で「もっと積極的にコミュニケーション取ろうね」って言われるたびに、内心「いや、これが私のデフォルトなんですけど」って思ってる。タナカ課長は悪い人じゃないけど、あの人の「チームワーク」の定義には、たぶん私みたいな人間の居場所はない。でもジュンペイは、コミュ障のまま、自分のやり方で戦っている。それだけで、なんかちょっと救われる。
通勤電車の中で読むのが特にいい。周りに人はいっぱいいるのに誰とも話さない、あの空間で、画面の中のジュンペイも一人で戦ってる。「お前もか」って思いながらスマホをスクロールする時間が、私にとっては一日のなかで一番安心できる瞬間かもしれない。
もし「召喚」のスキルが現実にあったら、会議のときに召喚獣出して代わりに発言させたいな。いやそれはダメか。でもさ、パーティー組めなくても召喚獣がいればなんとかなるってことは、私も自分なりの武器を見つけたらなんとかなるのかな。……ならないか。でもまあ、そう思わせてくれるだけで、このマンガには感謝してる。
ユウの本音まとめ
正直、最初はタイトルだけ見て「コミュ障ネタの軽いやつかな」と思ってた。でもあらすじを読んで、これはそういうのとは違うなと感じた。チートなし、仲間なし、コミュ障というハンデ付き。それでも異世界で生活費を稼ぐために命がけで冒険する。この設定だけで、もう「読まなきゃ」って思わされた。
ジュンペイの境遇は極端に見えて、実はすごく普遍的だと思う。誰だって得意不得意があって、「みんなが当たり前にできること」ができない苦しさを抱えてる。それを異世界バトルファンタジーという枠の中で描いてくれるから、説教くさくならずに心に入ってくる。召喚獣と一緒に必死に戦うジュンペイを見てると、「私も明日、自分なりのやり方でやるか」って、ほんの少しだけ思える。ほんの少しだけね。
明日も満員電車に揺られて、タナカ課長の小言を聞いて、ミカ先輩に気を使って、帰ったらまたこのマンガの続きを読む。現実は相変わらずだけど、スマホの中にジュンペイがいると思うと、まあ、もうちょっと頑張れる気がする。たぶん。


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