飲み会を断って帰ってきた夜だった。同期のサトウが「みんなで行こうよ〜」って言うのを「ちょっと体調が…」って曖昧に笑ってかわして、コンビニで缶チューハイとサラダチキンだけ買って帰宅。風呂にお湯ためてる間にスマホいじってたら、電子書籍アプリのおすすめ欄に『魔女と傭兵』が出てきた。表紙の雰囲気がなんというか、重厚っていうか、いわゆるキラキラした異世界ファンタジーとはちょっと違う空気で。「本格ファンタジー」って書いてあるし、なろう発のコミカライズらしい。ふーん、と思いながらとりあえず開いた。
そしたらもう、風呂のお湯が冷めた。いや、正確に言うと追い焚きを2回した。気づいたら23時を余裕で回っていて、明日も普通に出勤なのに、ページをめくる手が止まらない。飲み会断って正解だった。いや、断った理由は別にマンガのためじゃなかったんだけど、結果としてこの出会いがあったから正解。私の直感、たまに仕事する。
「魔女」と「傭兵」。このシンプルなタイトルに惹かれたのは、たぶん私が今、誰かに守られたいとかそういう甘っちょろいことを無意識に求めてたからだと思う。疲れてるんだな、私。
今日のユウのため息 ── ちょっとした不運・体調不良 ──

…まあ、愚痴はこのへんにして。今日の本題いくわ。
作品情報 ── 魔女と傭兵

| 作品名 | 魔女と傭兵 |
|---|---|
| 作者 | 宮木真人, 超法規的かえる, 叶世べんち |
| シリーズ | 魔女と傭兵 |
| ジャンル | 異世界系, ファンタジー |
要するにこういう話だ。最凶と恐れられる魔女シアーシャがいて、人間たちに命を狙われ続けている。で、その魔女討伐に参加した傭兵ジグが、死闘の果てに魔女の素顔を見る。そしたら想像と全然違ったと。そこからシアーシャが「あなたに護衛を依頼します」ってジグに頼んで、命を狙われない安全な場所を求めて、二人で未知の異大陸に渡る——っていうのが大筋。
つまり「最強の魔女×歴戦の傭兵の逃避行ファンタジー」。転生でもチートでもない、ガチの異世界冒険譚。しかもたどり着いた異大陸は、失われた魔術や凶悪な魔獣がうろついてる危険地帯らしい。平穏を求めて旅に出たのに平穏とは程遠いっていう、この「求めても手に入らない」感じがもうリアルすぎて泣ける。
一行でまとめると、「命を狙われる最凶の魔女と、その護衛を引き受けた傭兵が、安息の地を求めて未知の大陸を旅する本格ファンタジー」。……なんか、ラノベっぽいキャッキャした感じじゃなくて、骨太な物語の匂いがする。
見どころ①:「安息の地を求める旅」という設定が、疲れた大人にぶっ刺さる
異世界ファンタジーって、転生してチートもらってウェーイ!みたいなのが多い印象あるんだけど、この作品はあらすじを読む限り全然そういうノリじゃない。魔女シアーシャが求めてるのは「命を狙われない場所」。つまり安全に生きられる場所。それだけ。それだけのことなのに、それが手に入らないっていう。この設定だけでもう心臓を掴まれた気がした。
だって私も毎日「安息の地」を求めてるから。物理的に命は狙われてないけど、精神はわりと毎日削られてる。月曜の朝の満員電車、タナカ課長の「これ今日中ね」、終わらない入力作業。別にドラゴンに襲われてるわけじゃないけど、こっちはこっちで戦場なんだよ。だからシアーシャの「ただ安全に暮らしたい」っていう切実な願いが、笑えないくらい共感できてしまう。
それと、舞台が未知の異大陸っていうのがいい。誰も知らない場所、誰も自分のことを知らない場所。そこに行けば何か変わるかもしれないっていう希望と、でも実際行ってみたら全然甘くなかったっていうリアル。この手のファンタジーにありがちな「行けば解決」じゃなくて、新天地にも新天地の地獄がある、っていうのがむしろ誠実な気がする。
あと「なろう発で圧倒的支持」って書いてあるから、原作のストーリーはかなり練り込まれてるんだろうなと期待してる。王道だけど異端、っていうキャッチコピーも気になる。王道の安心感と、ちょっとした裏切りのバランス。この手のジャンルが好きな人はたまらないやつだと思う。
見どころ②:魔女と傭兵、この二人の関係性がたまらなく気になる
まずシアーシャ。「最凶の魔女」って呼ばれてるのに、命を狙われない場所を求めてるっていうギャップ。最凶なのに逃げてるの? 最凶なのに怯えてるの? っていう矛盾が気になりすぎる。あらすじに「魔女の素顔はジグの想像とは異なるものだった」って書いてあるから、たぶん世間で言われてるような恐ろしい存在じゃないんだろうな。周りに勝手にレッテル貼られて、本当の自分を見てもらえない——って、それ私の後輩のユナちゃんじゃん。おとなしいから「やる気ない」って思われてるけど、実は誰より丁寧に仕事してるのに。世の中、見た目とか噂で人を判断しすぎ。
で、傭兵ジグ。「双刃の傭兵」って二つ名がかっこいい。討伐側だったのに、魔女の素顔を見て護衛を引き受けるっていう判断力。敵だったはずの相手を守る側に回るって、よっぽどのことがあったんだろうな。あらすじを読む限り、この人は自分の目で見たものを信じるタイプっぽい。世間の評判とか周りの空気とか関係なく。こういう人、現実にいてほしい。うちの職場にはいない。
二人の関係が恋愛に発展するのかどうかはわからないけど、「依頼主と護衛」っていう適度な距離感がいい。ベタベタしすぎない信頼関係っていうのかな。命を預ける側と、命を守る側。この緊張感のある関係性の中で、少しずつ何かが変わっていく——みたいな展開だったら、もう私は寝不足確定だと思う。
こういう「対等な二人が背中を預け合う」系の関係性、弱い。圧倒的に弱い。
見どころ③:骨太ファンタジーが連れて行ってくれる、ガチの逃避行
この作品の一番の魅力って、「本格ファンタジー」としての没入感だと思う。失われた魔術、凶悪な魔獣、未知の異大陸——こういうワードが並んでるだけで、もうワクワクが止まらない。チート能力でサクサク進むんじゃなくて、ガチで危険な世界を二人で切り抜けていくタイプの物語っぽいから、読んでて手に汗握る感じがある。バトルの緊張感とか、未知の土地を探索する高揚感とか、この手のファンタジーの醍醐味を存分に味わえそう。
私は普段、癒し系とか恋愛マンガばかり読んでるんだけど、たまにこういう硬派なファンタジーに出会うと、脳みその使ってなかった部分が動き出す感じがする。現実の仕事では使わない想像力が、ぶわっと開放される。エクセルの数字とにらめっこしてた脳が、魔獣の咆哮と剣戟の音で上書きされていく。これが気持ちいい。
ただ、読み終わったら結局ベッドの上で、明日の目覚ましが6時半にセットされてるスマホを握ってるんだけどね。異大陸には行けない。私の冒険は明日も満員電車から始まる。でも、その満員電車に乗る前にあと1話だけ読もう——ってなるのが、この作品の中毒性なんだと思う。
見どころ④:「ここじゃないどこかへ行きたい」全ての社畜に捧ぐ
シアーシャが「命を狙われない場所」を求めてるように、私だって「精神を削られない場所」を求めてる。毎朝通勤電車に揺られながら、「ここじゃないどこかに行きたい」って思わない社畜いる? いないでしょ。タナカ課長の「ちょっといい?」が聞こえない世界に行きたい。ミカ先輩の「え、まだ終わってないの?」が飛んでこない大陸に渡りたい。
この作品の「未知の異大陸に渡る」っていう設定、社畜の「転職したい」「いっそ全部リセットしたい」っていう願望そのものだと思う。でも新天地に行っても楽園じゃなかった、っていうのもまたリアル。転職しても結局上司ガチャだし、引っ越しても隣人ガチャだし。でも、それでも「行く」って決断できる二人がかっこいいんだよ。私は今日も同じ席で同じ仕事してるけど。
傭兵ジグみたいに「自分の目で見て判断する」人間が、せめて一人でもいたら、職場ももうちょっとマシになるのにな。……なんて、マンガに理想を押し付けるのはよくないか。でもいいじゃん、フィクションくらい夢見させてよ。
ユウの本音まとめ
正直、最初は「異世界ファンタジーか、いつものやつかな」くらいの軽い気持ちで開いた。でも全然「いつものやつ」じゃなかった。チートでイキるタイプの話じゃなくて、居場所を失った魔女と、その魔女を守ると決めた傭兵の逃避行。この設定だけで、もう他の作品とは一線を画してると思う。あらすじ読んだだけでこれだけ引き込まれるんだから、読み進めたらどうなるんだろう。怖い。寝不足が加速する未来しか見えない。
「異端にして王道」っていうキャッチコピーが全てを表してる気がする。ファンタジーの王道をちゃんと踏まえつつ、ありきたりじゃない。安全な場所を求める旅って、考えてみたら人類の根源的な物語だし、だからこそ刺さるのかもしれない。
現実は相変わらずクソだし、明日もタナカ課長の「ちょっといい?」から始まる一日なんだけど、シアーシャとジグがまだ旅の途中なら、私もまだ大丈夫かなって思える。次の巻が出たら、また飲み会断って帰ってきて、追い焚き2回しながら読む。それが私の、ささやかな異大陸への渡航。


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