飲み会を断って帰ってきた夜だった。「たまには来なよ〜」ってミカ先輩に言われたけど、正直あの部署合同の飲み会、私の居場所なくない?端っこで枝豆つまみながらタナカ課長の自慢話を「へぇ〜」って聞く2時間に3,500円払うくらいなら、家でカップのアイス食べながらマンガ読んでたほうが500倍マシなんだわ。風呂上がりにタオルで髪を拭きながらスマホを開いて、電子書籍アプリのおすすめ欄をスクロールしていたら、目に飛び込んできたのがこのタイトルだった。
『たかが子爵嫡男に高貴な人たちがグイグイきて困る』。……長い。タイトル長い。でも、なんかわかる。「グイグイきて困る」って部分がやけに気になった。私なんて会社で誰にもグイグイこられないどころか、飲み会に誘われても社交辞令だし。「困る」って言ってみたいよな、モテすぎて困るって。そのちょっとしたジェラシーみたいな感情に背中を押されて、表紙をタップした。
そこからが地獄だった。いや、天国だった。気づいたら風呂上がりの髪はとっくに自然乾燥で変な癖がついてるし、アイスは溶けかけてるし、時計を見たら日付が変わっていた。飲み会断って正解だったわ、これ。
今日のユウのため息 ── 意味のない社内業務 ──

…まあ、愚痴はこのへんにして。今日の本題いくわ。
作品情報 ── たかが子爵嫡男に高貴な人たちがグイグイきて困る@COMIC

| 作品名 | たかが子爵嫡男に高貴な人たちがグイグイきて困る@COMIC |
|---|---|
| 作者 | miyasumi, あぐにゅん, 朝日川日和 |
| シリーズ | たかが子爵嫡男に高貴な人たちがグイグイきて困る@COMIC |
| ジャンル | 異世界系, ファンタジー |
要するにこういう話だ。舞台はRPGの世界「リアル・ファンタジー」で、主人公のレイは子爵家の嫡男。王立学院っていうエリートだらけの学園に入学するんだけど、周りは王子だの公爵令嬢だの権力者の息子だの、肩書ゴリゴリの人間ばっかり。そんな中で「たかが子爵」のレイは一見モブキャラ、出世欲もゼロのマイペース青年……に見えて、実は強力な精霊の加護持ちでカリスマ性もある「最強モブ」だったという。
しかも本人は自覚なし。王子にも婚約者にも聖女にも注目されて、気づいたらハーレム状態。タイトルの「グイグイきて困る」はそういうことね。無自覚に周囲を惹きつけてしまう系の主人公が、高貴な人たちに振り回されつつ運命を変えていく——出世欲ゼロなのに勝手に人生が動いていく「とばっちりファンタジー」。ずるい。出世欲ゼロなのにモテるって、現実で一番ありえないやつじゃん。
見どころ①:「RPGの世界」×「無自覚モブ」、この設定の組み合わせがずるい
あらすじを読んで最初に「おっ」と思ったのが、この世界自体がRPG「リアル・ファンタジー」であるっていう設定。レイ本人はそのことを知らないらしい。つまり読者だけが「この世界はゲームなんだ」って知っている状態で、その中をレイが無自覚にかき回していく構図になるわけで。これ、めちゃくちゃ気になるやつだ。RPGにはお約束の「イベント」や「フラグ」があるはずで、モブキャラであるはずのレイがそれを片っ端からぶち壊していく展開が想像できる。予測不能の「とばっちり」って、そういうことだろうなと。
この手の「実は最強」系の作品は数あれど、「本人がモブポジションにいる」っていうのがいい塩梅だと思う。王子でも勇者でもなく、子爵嫡男。学園のヒエラルキーでいえば確実に下の方。でも精霊の加護があって、カリスマ性もあって、周囲が放っておかない。この「立場と実力のギャップ」がたまらない。現実の私は立場も実力も低空飛行だけど、だからこそこのギャップに夢を見るんだよな。
王立学院っていう舞台設定もいい。学園ものって、身分も年齢もバラバラな人間が一箇所に集まるから人間関係がごちゃごちゃして面白くなる。王子もいれば公爵令嬢もいて、そこにモブの子爵嫡男がぽんと放り込まれる。格差社会の縮図みたいな場所で、一番下だと思われてた奴がじわじわ存在感を発揮していく。これ、会社の新人が実は仕事できるやつだった、みたいな話に通じるものがある。うちの部署にはそんな新人来ないけど。
あと「予測不能のとばっちりファンタジー」っていうキャッチコピーが好き。本人は何もしてないのに、周りが勝手に巻き込まれていく。レイの存在自体がイレギュラーで、世界のシナリオを狂わせていくんだろうなと。その「どうなるかわからない」感じが、ページをめくる手を止められなくさせるやつだ。
見どころ②:出世欲ゼロの主人公に自分を重ねたい、でも重ねられない悔しさ
レイ、ずるくない?出世欲ゼロでマイペースなのに、周りが勝手に評価してくれて、しかもハーレム状態。私だって出世欲ゼロだよ?マイペースに事務仕事こなしてるよ?でも誰もグイグイこないし、タナカ課長には「もうちょっと積極性を持ってほしいんだよね」って面談で言われるだけ。レイとの違いは精霊の加護とカリスマ性があるかないかだけなんだけど、その差がデカすぎるんだわ。
でも、レイの「自分のことを特別だと思ってない」ところはちょっとわかる。たぶんレイは本気で自分をモブだと思ってるんだろうな。周囲が騒いでも「なんで?」ってきょとんとしてるタイプ。これ、嫌味じゃなくて本気で無自覚だから憎めないんだよな。会社にもたまにいる、天然で人たらしの後輩ユナちゃんみたいなタイプ。ユナちゃんもたいした仕事してないのに(言い方)、先輩たちに可愛がられてお菓子もらってるし。あれはカリスマ性っていうか、愛嬌っていうか……。レイもそういう枠なんだろうなと。
そしてレイに寄ってくる高貴な人たちも気になる。王子、王子の婚約者、聖女。あらすじだけでこのメンツって、濃すぎないか。王子の婚約者がレイに興味を持つって、それ王子の立場どうなるの。聖女まで来るの。この手の作品の「ヒロイン候補たち」って一人一人の個性がはっきりしてることが多いから、推しが見つかる確率が高い。誰が本命になるのか、それとも全員から好かれ続けるのか。こういう「推しレース」を眺めるのも楽しみのひとつだよなぁ。
ミカ先輩に「最近なんか楽しそうだね」って言われたら、「推しレース見守ってるから」って答えるかもしれない。言わないけど。
見どころ③:「無自覚モテ」という最強のファンタジーに溺れる夜
この作品の一番の魅力って、突き詰めると「愛される」ってことのファンタジーだと思う。レイは自分から何かを求めたわけじゃない。出世も権力も欲しがってない。でも精霊の加護があって、カリスマ性があって、自然と人が集まってくる。これって現実ではほぼありえない話で、だからこそフィクションとして最高に気持ちいい。「何もしなくても認められる」「自分のままでいいのに周りが勝手に評価してくれる」——疲れた社会人の心に刺さらないわけがない。
恋愛要素もたっぷりありそうなのがいい。ハーレム状態ってことは、王子の婚約者や聖女がレイに好意を寄せるシーンがあるんだろうし、そのときのレイのリアクションとか、周囲の嫉妬とか、そういうのを見るのが楽しいんだよな。無自覚モテ系の主人公が鈍感で周囲がやきもきする展開、ベタだけど何度でも読める。私の恋愛事情がアプリのマッチング0件でも、マンガの中では王子と聖女が一人の男を取り合ってるんだから、それだけで人生のバランスは取れている。
ただ、ひとしきり堪能した後にスマホの画面を消すと、映るのは風呂上がりのすっぴんの自分の顔なんだよな。精霊の加護もカリスマ性もなくて、明日は月曜で、8時半に出社しなきゃいけない現実。でもいいの。レイが高貴な人たちにグイグイこられてる世界がスマホの中にあるだけで、もうちょっとだけ生きていけるから。
見どころ④:「出世欲ゼロなのに評価される」、全社畜が泣いた幻の理想形
レイの「出世欲ゼロでマイペース」なのに「周りが勝手に認めてくれる」スタイル、これ会社で実現できたら最強だよなって思う。現実は真逆で、出世欲がないと「やる気がない」って判断されるし、マイペースでいると「協調性がない」って言われる。タナカ課長なんて、残業してる人間のほうが「頑張ってる」って評価する古いタイプだから、定時で帰る私は完全にモブキャラ扱いですよ。レイと同じモブなのに、精霊の加護がないだけでこの差。
通勤電車で揺られながら「精霊の加護、ほしいな……」って本気で思った自分がちょっと悲しかったけど、でもそれでいいんだ。この作品は「頑張らなくても報われる世界」を見せてくれる。現実は頑張っても報われないことのほうが多いし、頑張る気力すらない夜もある。そんなとき、レイが何もしてないのに高貴な人たちにグイグイこられてるのを見ると、なんか「まあいっか」って思える。不思議なもんで、フィクションの中の成功を眺めるだけで、自分の心がちょっとだけ軽くなるんだよな。
ユウの本音まとめ
正直に言う。この作品、あらすじの時点でもう好き。「無自覚愛され系モブが最強」っていう設定に、「世界がRPGだった」っていうメタ要素が乗っかって、さらにハーレム展開まであるの、情報量が多すぎて嬉しい。タイトルの「たかが子爵嫡男に〜」っていうフレーズも絶妙で、「たかが」って言葉がレイのポジションの低さと、それを覆す展開の痛快さを同時に表現してるのがうまい。
この手のジャンルって数が多いから「また同じパターンか」って思うこともあるんだけど、「とばっちりファンタジー」っていうコンセプトがちゃんと差別化になってる気がする。レイが自分から動かないのに、周囲が勝手に動いて世界が変わっていく。その巻き込まれ感を楽しむ作品って意外と少ないし、受け身の主人公に感情移入しやすい私みたいなタイプにはドンピシャだった。
現実の私は明日も8時半に出社して、タナカ課長の話を聞き流しながら事務仕事をこなす日々が続く。精霊の加護もカリスマ性もないし、高貴な人がグイグイきてくれることも一生ない。でも、このマンガの続きがスマホの中で待っていると思えば、まあ、もうちょっとだけ頑張れる。今度の飲み会もたぶん断るけど、その代わりこの作品の続きを読む。それが私の最適解。

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