飲み会を断って帰ってきた夜だった。同期のユナちゃんが「ユウさんも来ましょうよ〜」って言ってくれたんだけど、今日はもう無理。朝から電話対応でずっと気を遣いっぱなしで、昼休みにはタナカ課長から「この資料の数字、合ってる?」って三回も確認されて、午後は午後でミカ先輩の愚痴を聞きながら入力作業して。もう人の顔を見たくない。人間に疲れた。風呂に入ってパジャマに着替えて、布団にダイブして、スマホだけが友達の夜が始まる。
電子書籍アプリを開いてなんとなく新着を眺めてたら、タイトルに目が止まった。「社交界の毒婦とよばれる私〜素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます〜」。……長い。タイトル長い。でも「腕を折られたので責任とってもらいます」って何? 気になりすぎる。毒婦って呼ばれてるのに腕折られるの? しかも「責任とってもらいます」のパワーワード感よ。なんかもう、このタイトルだけで疲れた脳にアドレナリンが出た。
表紙を見たら、綺麗な女性と端正な男性が描かれてて、あ、これは間違いなくラブコメの匂いがするやつ。深夜テンションで「まぁ1話だけ……」って読み始めたのが運の尽き。気づいたら止まらなくなってた。「腕折られたのに恋愛に発展するの?」という好奇心が、私の睡眠時間を容赦なく削っていった。
今日のユウのため息 ── 食生活の乱れ ──

…まあ、愚痴はこのへんにして。今日の本題いくわ。
作品情報 ── 社交界の毒婦とよばれる私〜素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます〜

| 作品名 | 社交界の毒婦とよばれる私〜素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます〜 |
|---|---|
| 作者 | 霜月かいり, 来須みかん |
| シリーズ | 社交界の毒婦とよばれる私〜素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます〜 |
| ジャンル | ラブコメ, ファンタジー |
要するにこういう話。主人公は「社交界の毒婦」って呼ばれてるお嬢様なんだけど、実はそれ、演技。異母妹のマリンが「悲劇のヒロイン」でいたいがために、自分が率先して悪役を演じてあげてるっていうやつ。しかもその理由が「そうしないとマリンを溺愛してる父親にご飯抜きにされるから」。……ご飯抜きて。重い。令嬢なのにご飯抜きて。
で、ある夜会でマリンが狙ってるイケメン・バルゴア辺境伯令息のリオの前で、いつも通り悪役ムーブしようとしたら、リオに手首を掴まれてゴギッと。腕、折られちゃった。そこから「責任とってもらいます」の流れになるらしい。
一言でまとめると、「家族に虐げられながら空気を読みすぎた令嬢が、腕を折ってきたイケメンに人生を変えられる話」。……空気を読みすぎて損する人間の物語とか、私に効きすぎるからやめてほしい。
見どころ①:「空気読みすぎ令嬢」の設定がリアルに刺さりすぎる
あらすじを読んだ時点でもう胸がキュッとなった。「空気を読むのがうまかった」「だから悪役を演じている」って、これ現代社会の縮図じゃん。異世界の話なのに、なんでこんなに身に覚えがあるの。会社で「ユウさんって気が利くよね」って言われるたびに、いやそれ褒めてるようで搾取してるだけだからね?って心の中で思ってる私には、この設定だけで共感の嵐。
しかも主人公が悪役を演じてる理由が「食事を抜かれるから」っていうのが、またリアルにしんどい。打算でも野心でもなく、ただ生きるために空気を読んでるだけ。自分の意思で悪役をやってるわけじゃなくて、そうしなきゃ生存できないからやってるだけ。この「選択肢がないように見える状況」がたまらなくリアルで、ファンタジーなのに全然ファンタジーじゃない。
そこに「腕を折る」っていう物理的なアクシデントが入ってくるのが面白い。あらすじを読む限り、このゴギッが主人公の人生の転換点になるっぽくて。今まで空気を読んで我慢して、自分を殺して生きてきた女の子の人生が、まさかの骨折から動き出すって、なんかもう運命ってやつを感じる。
こういう「理不尽な環境で耐えてきた主人公に光が差す」系の展開って、この手のジャンルの醍醐味だと思うんだけど、「腕折り」から始まるラブコメって斬新すぎて、読む前からワクワクが止まらない。タイトルの時点で勝ってる。
見どころ②:主人公の「諦めた顔して生きてる」感がもう私
主人公、好き。もう序盤のあらすじだけで好き。「はいはい、私がマリンのお望みどおり頭からワインをぶっかけてあげるから、あなたたちはさっさとくっついてイチャイチャしなさいよ」って、このセリフに人格が全部詰まってる。諦めてるけど卑屈じゃなくて、自虐的だけどユーモアがあって、強かじゃないけどしたたかに生きてる。こういう主人公、大好き。タナカ課長に理不尽を言われても「はいはい、承知しました〜」って笑顔で返す私と、たぶん同じ目をしてる。
異母妹のマリンはあらすじから察するにゴリゴリの「世界は私中心に回ってる」系キャラっぽくて、もう想像するだけでイライラする。でもいるよね、こういう人。自分が可哀想な立場でいたいから周りに悪役を押し付ける人。うちの職場にも……いや、やめとこう。特定の誰かの顔が浮かんだけど、それは心にしまっておく。
そしてリオ。バルゴア辺境伯の令息。腕を折ったのはアレだけど、タイトルに「素敵な」ってついてるから、たぶんいい人なんだろうな。主人公の演技を見抜いて、ちゃんと本質を見てくれるタイプだといいなぁ。空気を読みすぎて自分を見失ってる女に「お前は悪くない」って言ってくれる男、現実にいたら全力で惚れる。いないけど。うん、いないけど。
「責任とってもらいます」っていう主人公の開き直り方にも期待してる。ずっと我慢してきた人間が、やっと自分のために声を上げる瞬間って最高にカタルシスがあるから。
見どころ③:胸キュンと「ざまぁ」の二段構えが最高のご褒美
この作品、ラブコメだけど裏にしっかり「ざまぁ」要素がありそうなのがたまらない。あらすじを読む限り、主人公をずっと虐げてきた父親と異母妹マリンに対して、いつか主人公が幸せになることで間接的に「ざまぁ」が成立するタイプの話だと思う。で、その幸せの鍵がリオとの恋愛。恋愛によるスカッと感と胸キュンが同時に来る構成、贅沢すぎない?
こういう「不遇な令嬢が本当の自分を認めてくれる人に出会う」系のときめきって、深夜の布団の中で読むと破壊力が倍増する。一日中他人の顔色を窺って、空気を読んで、自分を殺して働いた後に読む「あなたはそのままでいい」系の展開は、もはや精神安定剤。医薬品として認定してほしい。
「腕を折られたから責任とれ」っていう出会いのインパクトも含めて、たぶんこの二人のやり取りはかなりテンポが良さそうで。主人公の皮肉っぽい口調とリオのキャラの掛け合いが面白いんだろうなって、あらすじの段階で予感がある。ラブコメとしてのときめきを期待しつつ、理不尽な家族にギャフンと言わせてくれる展開にも期待。
……まぁ読み終わったら結局、腕を折ってくれるイケメンもいない現実の布団に戻ってくるんだけどね。明日も空気読んで生きていきますよ、ええ。
見どころ④:空気読みのプロ、それは毒婦令嬢と事務職OL
「空気を読むのがうまかった」。この一文、履歴書の自己PRに書きたいレベルで共感する。主人公は社交界で空気を読んで悪役を演じてるけど、私は会社で空気を読んで雑務を引き受けてる。やってること、本質的に同じじゃない? 「この仕事、ユウさんお願いしていい?」「あ、はい大丈夫です」って反射的に答えちゃう私と、マリンの望み通りワインぶっかけちゃう主人公、たぶん前世で姉妹だったと思う。
ミカ先輩にこの作品の話したら「ユウ、それ自分に重ねすぎじゃない?」って言われそうだけど、重ねるよ。重ねるに決まってるでしょ。だって空気読みすぎて損してる人間にとって、「その空気の読みは本来の自分じゃない」って誰かに気づいてもらえる話って、一番欲しい物語なんだから。
会社で「毒婦」とは呼ばれないけど、「あの子に頼めばなんでもやってくれる」って思われてる時点で、搾取のされ方は似たようなもの。誰かリオみたいに「おかしくない?それ」って言ってくれる人、私の部署にも来てくれませんかね。来ないか。知ってた。
ユウの本音まとめ
正直、タイトルの長さに最初はちょっとひるんだ。でもあらすじを読んだら「あ、これは私のためのマンガだ」ってなった。空気を読みすぎて自分を見失ってる主人公が、予想外の出会いで人生を変えていく。この構図だけで、もう勝ち確。しかもそのきっかけが「腕折り」っていう力技なのが最高にラブコメしてて、重くなりすぎないバランス感がいい。
あらすじの段階でここまで心を持っていかれるマンガって、そうそうない。主人公の「はいはい、お望みどおりにやりますよ」って態度の裏にある諦めと痛みが、もう自分のことみたいで。でもそこから「責任とってもらいます」って開き直れるのが、フィクションの力だよなぁ。現実じゃ腕折られたら労災申請するだけだけど。
現実はまぁ、明日もタナカ課長の顔を見るし、空気を読んで雑務を引き受けるし、飲み会の幹事を押し付けられるんだろうけど。でもこういうマンガを読んだ夜は、なんかちょっとだけ「もう少し自分のために生きてもいいのかな」って思える。思えるだけで、実行はしないんだけど。でも、まぁ、それでいい。続きが気になりすぎるから、明日の昼休みにこっそりスマホで読む。タナカ課長には見つからないようにする。

コメント