飲み会を断った。ミカ先輩に「え、来ないの?」って言われたけど、「ちょっと体調が…」って適当に濁して帰ってきた。別に嘘じゃない。心の体調が悪いんだから。帰宅して、シャワー浴びて、髪も乾かさないままベッドにダイブ。濡れた髪が枕に張り付くのも気にせず、スマホを開いた。今日はもう誰とも喋りたくないし、何も考えたくない。マンガアプリのおすすめ欄をぼんやりスクロールしてたら、やたら気合の入った表紙が目に飛び込んできた。『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』。タイトル長い。でも、この「気ままに」って言葉に、心臓を鷲掴みにされた。気ままに。私が一番欲しいもの、それだ。
累計1800万PVとか、マガポケセールスランキング1位とか、なんか数字がすごいことになってる。小説家になろう発のコミカライズらしい。ふーん、と思いながらなんとなく1話を開いた。……気づいたら2時間経ってた。風呂上がりの髪はもうカピカピに乾いてるし、明日普通に仕事なのに、指が止まらない。「気ままに魔術を極める」って、要するに好きなことだけやって生きるってことでしょ。それ、私が30年以上探し続けてる生き方なんですけど。王子様の魔術修行に、事務職OLの私がこんなに感情移入する夜が来るとは思わなかった。
今日のユウのため息 ── 給料日前の金欠 ──

…まあ、愚痴はこのへんにして。今日の本題いくわ。
作品情報 ── 転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます

| 作品名 | 転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます |
|---|---|
| 作者 | 石沢庸介, 謙虚なサークル, メル。 |
| シリーズ | 転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます |
| ジャンル | 異世界系, ファンタジー |
要するにこういう話だ。前世で「魔術を極めたい!」という想いだけを残して死んだ男が、記憶を持ったまま異世界の王族――サルーム国の第七王子ロイドとして転生する。で、生まれ変わった先では前世とは比べものにならない桁違いの魔力を持っていて、しかも第七王子という「王位継承とか面倒な政治に巻き込まれにくい」絶妙なポジション。つまり、最強の才能と最高の自由を両手に持って、好きなだけ魔術を研究できる環境が揃ってしまったわけだ。
「庶民の転生先が王子で、チート魔力で好きなことだけやる」――一行でまとめるとこうなる。異世界転生もののテンプレと言えばテンプレなんだけど、このマンガのポイントは「世界を救いたい」でも「復讐したい」でもなく、純粋に「好きなことを極めたい」っていう動機が核にあるところ。これ、地味にレアだと思う。だって「やりたいことをやりたいだけやる」って、現実で一番難しいことじゃない? あらすじ読んだだけで、もう羨ましさで胸が苦しい。
見どころ①:「好きを極める」っていう最強のファンタジー
異世界転生もので「チートで無双する」作品は山ほどある。でもこのマンガは、あらすじを読む限り、無双すること自体が目的じゃなくて「魔術を極める」っていう探究心が原動力になってるっぽいのが面白い。ロイドくんは強くなりたいんじゃなくて、知りたい、学びたい、もっと深く理解したいっていうタイプに見える。そこがね、なんかこう、刺さるんだわ。
私だって昔は好きなことがあった。学生の頃はイラストを描くのが好きだったし、本を読むのだって何時間でもできた。でも社会人になって、いつの間にか「好きなこと」が「空いた時間にやること」になって、最終的には「疲れてできないこと」になった。ロイドくんは転生という手段で、その「好きなことだけに没頭できる環境」を手に入れた。王族の財力、桁違いの魔力、自由な身分。全部揃ってる。これを見て「ご都合主義だ」って笑う人もいるかもしれないけど、私は笑えない。だってこれは、私たちが現実で絶対に手に入れられないものの詰め合わせなんだから。
この手のジャンルって、敵が出てきて戦って強さを証明する展開になりがちだけど、タイトルの「気ままに魔術を極めます」っていうニュアンスからすると、ガチガチのバトルよりも研究や実験の楽しさにフォーカスしてそうな予感がある。それってつまり、「努力が楽しい」世界の話ってことでしょ。好きなことに打ち込んで、それがそのまま強さになる。現実だと好きなことと仕事が一致してる人なんてほんの一握りなのに、ロイドくんはそれを当たり前みたいにやっている。ファンタジーの設定以上に、この「好きなことを好きなだけやれる」っていう部分が、この作品最大のファンタジーだと思う。
あと地味にいいのが、「第七王子」っていう設定。第一王子とか第三王子だったら王位継承とか面倒なしがらみが出てくるけど、第七だよ、第七。絶妙に放っておかれるポジション。会社で言うなら、出世コースから外れてるけど、だからこそ自分のペースで仕事ができる窓際……いや、窓際って言うとネガティブだけど、ロイドくんの場合は自ら望んだ自由席みたいなもんだ。羨ましすぎる。
見どころ②:ロイドくん、その無邪気さ分けてくれない?
主人公のロイドくん、あらすじを読む限りだと「前世の記憶を持つ子供」なわけで、つまり中身は大人なのに見た目は子供、しかも王子。このギャップがまず面白い。前世では叶わなかった夢を、転生先で全力で追いかけてる姿って、なんかこう……眩しい。純粋に「好きだから」で動けるその無邪気さが、30代の事務職OLの心に容赦なく突き刺さってくる。
私の職場にはタナカ課長がいて、あの人は「好きとか嫌いとかじゃなくて、やるべきことをやれ」みたいなタイプだ。正しいんだけど、あの人の口癖を聞くたびに、私の中の何かが少しずつ削れていく感覚がある。ロイドくんは真逆だ。やるべきこととかじゃなくて、やりたいことをやる。それが許される環境にいる。タナカ課長にこのマンガを読ませたらどう思うんだろう。たぶん「現実見ろ」って言うんだろうな。だから読ませない。
この手の作品って、主人公の周りに個性的なキャラが集まってくるのが定番だと思うんだけど、ロイドくんの場合は「桁外れの魔力」を持ってるから、それに惹かれて来る人もいれば、王族の立場に近づいてくる人もいるんだろうなと想像する。そういう人間関係の中で、ロイドくん自身は魔術にしか興味がないっていうマイペースさを貫いてるとしたら、それはそれで最高にカッコいい。私もそうありたい。会社の人間関係とか評価とか気にしないで、自分の好きなことだけに集中できる強さが欲しい。
あと、「庶民が王子に転生」っていうところもポイントだと思う。前世が庶民だから、きっと庶民の感覚を持ったまま王族社会にいるわけで。そのズレがコメディになりそうだし、逆に庶民の価値観だからこそ見える真理みたいなものもあるのかもしれない。私も庶民中の庶民だから、ロイドくんの庶民パートには勝手に親近感を覚えてしまう。
見どころ③:「好きなことだけで生きる」妄想に溺れる幸福
このマンガの一番の中毒性って、たぶん「自分がロイドくんだったら」っていう妄想の気持ちよさだと思う。桁違いの魔力があって、王子っていう安定した身分があって、しかも第七王子だから面倒な責任も少ない。そこで好きな魔術をとことん極められる。これ、異世界転生ものの醍醐味としては最上級じゃないか。
私がもしロイドくんの立場に転生したら何を極めるだろう。魔術……いや、たぶん私は魔術の中でも「快適に暮らすための生活魔術」とかに全振りしそう。掃除の魔術、料理の魔術、肩こり解消の魔術。夢が小さい。でもそれでいいんだ。好きなことを好きなだけやれるなら、規模なんてどうでもいい。ロイドくんは魔術そのものへの純粋な探究心があるけど、私にはそこまでのものがない。だからこそ、ロイドくんの姿が眩しくて、読んでいて心地いい。
読みながら何度も思った。「こういう人生がよかった」って。でも、ページを閉じた瞬間に現実が戻ってくる。明日の朝は7時のアラームで起きて、通勤電車に揺られて、エクセルと向き合うんだ。ロイドくんは魔術書と向き合ってるのに、私はエクセルのVLOOKUP関数。同じ「極める」でもだいぶ趣が違う。でも、だからこそこのマンガを読む時間が至福なんだと思う。現実に「好きなことだけで生きる」選択肢がないから、せめてマンガの中でその幸福を味わう。それが私なりのサバイバル術だ。
見どころ④:事務職OL、第七王子の自由に咽び泣く
「第七王子だから自由」っていうの、社畜にはたまらなく刺さる設定だと思う。会社って序列の世界じゃないですか。タナカ課長がいて、ミカ先輩がいて、その下に私がいて。上にいけばいくほど責任が重くて、下にいればいるほど自由がない。ロイドくんは王族っていうヒエラルキーの中にいるのに、「第七」という絶妙なポジションで自由を確保してる。これ、私の理想のキャリアパスだ。出世しなくていいから、放っておいてほしい。
もし私に桁違いの魔力……じゃなくて、桁違いの事務処理能力があったら、定時でサッと帰って好きなことに時間を使えるんだろうか。いや、現実だと「仕事できるね! じゃあこれもお願い!」って仕事が増えるだけか。チートスキルが通用しない世界、それが日本の会社。ロイドくんの「お気楽無双ライフ」というフレーズを見るたびに、「お気楽」って言葉がどれだけ贅沢なものか思い知らされる。
同じように平日の夜、布団の中でスマホを握りしめてる同志たちへ。このマンガ、読んで損はないと思う。好きなことに没頭する少年の姿を見て、「ああ、私にもこういう時期があったな」とか「こういうふうに生きたかったな」って、ちょっとだけ心が軽くなる。現実は変わらないけど、明日の通勤電車で続きを読む楽しみがあるだけで、月曜の朝のしんどさが2%くらい減る気がする。
ユウの本音まとめ
正直に言う。あらすじを読んだ時点で「またよくある異世界転生チートものか」と思わなかったと言ったら嘘になる。でも、読み始めたらその先入観は吹っ飛んだ。1800万PVっていう数字は伊達じゃない。「気ままに魔術を極める」っていうコンセプトが、想像以上に心地よかった。戦わなきゃいけないとか、世界を救わなきゃいけないとか、そういう義務感じゃなくて、「好きだからやる」っていうシンプルな動機で突き進む物語は、読んでいるだけで肩の力が抜ける。
ロイドくんの魔術への純粋な情熱を見ていると、自分が最後に何かに夢中になったのはいつだったか考えてしまう。たぶんこのマンガを深夜2時に読んでる今がそうなんだけど。好きなことに全力を注げる環境と才能と自由、その全部を持ってるロイドくんは反則だけど、だからこそフィクションとして最高に気持ちいい。
明日も朝7時に起きて会社に行く。エクセルを開いて、タナカ課長の指示を聞いて、ミカ先輩と昼ごはんを食べる。何も変わらない日常。でも、スマホの中にロイドくんの物語が待っていると思えば、なんとか電車に乗れる。通勤時間が読書時間に変わるなら、満員電車もまあ……ギリギリ許せる。ギリギリだけど。


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