飲み会を断って帰ってきた夜だった。「ごめん今日ちょっと体調が…」って、もう何回目だろうこの嘘。別に嫌いな人たちじゃないんだけど、金曜でもないのに居酒屋で2時間も気を遣いながら笑顔作る体力が残ってなかった。風呂に入って、髪もろくに乾かさないまま布団にダイブして、なんとなくスマホを開いた。電子書籍アプリのおすすめ欄に、黒いマントを纏ったキャラクターがドーンと表示されてて。『陰の実力者になりたくて!』。タイトルからして厨二全開で、正直「あー、こういうやつね」って最初はスルーしかけたのよ。
でも「最強の勘違いシリアスコメディ」っていう煽り文句がちょっと引っかかった。勘違い?コメディ?異世界もので?なんか気になって、試し読みをタップしたのが運の尽きだった。気づいたら深夜3時。明日も普通に仕事あるのに。飲み会断って早く寝ようと思ってたのに、結局睡眠時間削ってるの、本末転倒すぎて自分で笑った。でもいいの。職場の飲み会より確実に楽しかったから。断って正解だったわ、今日は。
今日のユウのため息 ── マウント後輩ユナちゃん ──

…まあ、愚痴はこのへんにして。今日の本題いくわ。
作品情報 ── 陰の実力者になりたくて!

| 作品名 | 陰の実力者になりたくて! |
|---|---|
| 作者 | 坂野杏梨, 逢沢大介, 東西 |
| シリーズ | 陰の実力者になりたくて! |
| ジャンル | ファンタジー |
要するにこういう話。主人公のシドくんは、主人公ポジションでもラスボスポジションでもなく、「物語の裏で暗躍する陰の実力者」に憧れてるちょっとアレな少年。転生前からその夢を追いかけてて、異世界に転生してからも自分で「闇の教団と戦う陰の組織のリーダー」っていう設定を作って、ノリノリでそれを演じてるわけ。
で、ここがこの作品のミソなんだけど、シドが完全にごっこ遊びのつもりで作った「闇の教団」が、まさかの実在してた。本人は全く気づいてないのに、周りからは「全てを見通す偉大なるリーダー」として崇拝されてる。つまり、壮大な勘違いがそのまま真実になっちゃってる状態。一行でまとめると、「厨二病の妄想が全部リアルだった転生者が、無自覚に世界を救っちゃう話」。もうこの設定だけで勝ちじゃない?
見どころ①:「全部計算通り(※偶然です)」の快感がクセになる
この作品の何がすごいって、「勘違い」という構造がストーリーのあらゆるところに効いてきそうなところ。普通の異世界ものって、主人公が強くて敵を倒して「すげー!」ってなるパターンが王道じゃないですか。でもこの作品は、主人公のシドが「俺は陰の実力者として暗躍している…フッ」ってカッコつけてるだけなのに、それが全部かみ合っちゃうっていう。あらすじを読む限り、この「ズレ」がずっと続くわけで、それってつまり読む側は常に「いや、お前それ偶然だから!」ってツッコミ入れ続けられるってことでしょ。最高じゃん。
私、仕事で「結果オーライ」ってやつが一番好きなのよ。ミスったと思ったけど、なぜか上手くいってたやつ。タナカ課長に「よく気づいたね」って褒められたけど、実はただの偶然だったやつ。あの快感に近い。でもシドの場合はスケールが違いすぎる。組織を作って、闇の教団と戦って、世界の命運を左右してるのに、全部「ごっこ遊び」のつもり。この温度差が面白くないわけがない。
しかも「シャドウガーデン」っていう組織名がまたいい。完全に厨二ネーミングなのに、組織のメンバーたちは大真面目にそのリーダーを敬ってるんでしょ?あらすじから察するに、シドの周りの人間たちが本気であればあるほど、シドの「俺カッケー」ごっこ遊びとのギャップが広がっていくわけで。シリアスとコメディの両立って難しいはずなのに、「勘違い」っていうたった一つの仕掛けでそれを成立させてるの、この設定考えた人、天才か?
疲れてる夜にこういうの読むと、頭空っぽにして笑えるから本当にありがたい。「考察しなきゃ」とか「伏線覚えとかなきゃ」とかじゃなくて、ただ「お前マジか」ってツッコミながら読み進められる。それが最高に心地いいのよ。
見どころ②:シド、お前のメンタルが一番チートだよ
シドっていう主人公、あらすじを読む限りだけど、かなり好き。だって、この子のモチベーションが「世界を救いたい」でも「強くなりたい」でもなく、「陰の実力者っぽいことがしたい」なのよ。目的が完全に「ロマン」なの。それがブレないの。いい意味でバカだし、いい意味で最強だし、何より本人が一番楽しそう。私、仕事でこの「本人が一番楽しそう」って状態、もう何年も経験してないから、それだけで眩しい。
で、気になるのは「シャドウガーデン」のメンバーたち。シドが適当に集めた(であろう)仲間たちが、シドのことを「全知全能のリーダー」だと信じ切ってるんでしょ?この構図、うちの会社で言うと、タナカ課長が偶然うまくいった企画を「最初から計算してました」って顔してるのと同じなんだけど、シドの場合は本当に実力が伴ってるから成立しちゃうわけで。タナカ課長との決定的な違いがそこ。タナカ課長は偶然がバレるけど、シドはバレない。うらやましい。
この手の作品って、周りのキャラがどれだけ「真面目に」主人公を信奉してるかで面白さが変わってくると思うのよ。ギャグ寄りの仲間だと笑いにしかならないけど、ガチで優秀な仲間たちが本気で崇拝してたら、そのギャップだけでご飯何杯でもいける。あらすじの雰囲気からして、きっと後者でしょ。「陰の実力者」という響きに相応しい、めちゃくちゃカッコいい仲間たちが、シドの一挙手一投足に深い意味を見出してるんだろうなって想像するだけで笑える。
こういうキャラクターって、見てるだけで元気もらえるのよ。自分の信じた道を(本人は遊びだけど)全力で突き進んでる姿って、疲れた社会人にはちょっと刺さる。私も明日からタナカ課長の指示を「全て計算通り…」って受け流すスキルが欲しい。
見どころ③:ツッコミ不在の世界で無双する爽快感、ストゼロより効く
この作品の一番の魅力って、「爽快感」だと思うのよ。ただの俺TUEEEとは違う種類の爽快感。だって、シドは強いだけじゃなくて、「本人が全く気にしてないのに周りが勝手にひれ伏す」っていう、もう爽快感のフルコースみたいな状態じゃないですか。強さを見せつけてドヤるんじゃなくて、本人はごっこ遊びを楽しんでるだけなのに結果として無双しちゃう。この「力み」のなさが、読んでるこっちまでスカッとさせてくれる。
現実って、頑張っても報われないことの方が多いじゃないですか。私なんて先週、3日かけて作った資料をタナカ課長に「方向性が違う」って一言で差し戻されたからね。3日だよ?でもシドは違う。適当に言った一言が名言として語り継がれ、なんとなくやった行動が世界を救っちゃう。この「頑張らなくても全部うまくいく」感、現実で絶対味わえないからこそマンガで摂取するしかないのよ。
あと、「勘違いコメディ」っていうジャンル自体がストレス解消に最適だと思ってて。シリアスな展開で手に汗握る必要もないし、鬱展開で心を抉られる心配もなさそう。ただひたすら「シドすげー(本人は気づいてない)」→「周り大混乱」→「でも結果オーライ」のループ。これ、深夜のテンションで読むと最高に気持ちいい。ストゼロ片手に読んだら中毒性やばいと思う。でもまあ、どれだけスカッとしても、明日の月曜日は来るんだけどね。スマホ閉じた瞬間に現実が殴りかかってくる。それでも、この爽快感を知ってるのと知らないのとでは、月曜の朝のダメージが全然違うのよ、たぶん。
見どころ④:「全部計算通りです」って言える人生がほしい
社会人やってると、「あ、今の偶然だったけどうまくいった」って瞬間、たまにあるじゃないですか。メールの誤送信が結果的に案件進めてくれたとか、適当に出した見積もりがちょうどよかったとか。でも現実は、それがバレた瞬間に「次からちゃんとやって」って怒られる。シドみたいに「全て計算通り」で押し通せる世界線がうらやましすぎる。
ミカ先輩にこの作品の話したら「あんた厨二病?」って笑われそうだけど、いいのよ。厨二で。だって現実がつまらないんだもん。毎日同じ電車に乗って、同じデスクに座って、同じエクセルを開いて。そんな日常を送ってる人間にとって、「自分だけが知っている秘密の力で世界を動かす」なんて設定、刺さらないわけがない。通勤電車の中で「実は私も陰の実力者なんだけどね…」って心の中でつぶやくだけで、満員電車のストレスが3割くらい減る気がする。気がするだけだけど。
新人のユナちゃんにもおすすめしたい。あの子、最近残業続きで顔が死んでるから。「ユナちゃん、これ読んで。頭空っぽにして笑えるから」って言いたい。社畜に必要なのは栄養ドリンクじゃなくて、こういうマンガなのよ。
ユウの本音まとめ
正直に言うと、異世界転生ものってもうお腹いっぱいだと思ってた。チートで無双して、ハーレムで、追放されて見返して…パターン出尽くしたでしょって。でも『陰の実力者になりたくて!』は、その先入観をぶっ壊してくれた。「勘違い」っていうたった一つの味付けで、ここまで新鮮に感じるものなんだなって。あらすじ読んだだけでワクワクしたの久しぶりだし、実際に読み始めたら止まらなかった。シドのブレないバカさ加減が、疲れた脳みそにちょうどいい。
読んでよかった。これは本当に、飲み会を断って正解だった夜の最高の収穫。深夜にゲラゲラ笑いながら読めるマンガって、ありそうでなかなかないのよ。シリアスな世界観なのに笑える、カッコいいのにバカ、強いのに自覚がない。この絶妙なバランスが癖になる。次の巻が出たら通勤電車で読むし、たぶんニヤニヤして周りに怪しまれるけど、知らない。
現実は相変わらず地味な事務仕事だし、陰の実力者にはなれないし、タナカ課長の指示は明日も飛んでくる。でも、スマホの中にはシドがいる。あいつが「全て計算通り」って顔してる姿を思い出すだけで、なんか笑えてくるから不思議。こういうマンガがあるから、私は明日も会社に行ける。たぶん。

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