残業後、終電間際の電車に揺られながらスマホを開いた。今日は本当にダメだった。朝イチで作った資料を「やり直し」の一言で突き返され、昼は電話対応に追われてコンビニおにぎりを片手で食べ、午後は会議の議事録を3パターン作らされた。誰か、私の仕事をちゃんと見てくれてる人、いるのかな。そんなことをぼんやり考えながら、電子書籍アプリのおすすめ欄をスクロールしていたら、目に飛び込んできたタイトル。『雑用付与術師が自分の最強に気付くまで』。……雑用。付与術師。自分の最強に気付くまで。この単語の並びだけで、もう心臓を掴まれた気がした。
だって「雑用」だよ。私じゃん。毎日コピー取って、備品を補充して、誰かのフォローをして、それでも「お前の仕事って何?」みたいな顔をされる。そんな人間が「実は最強でした」って、こんなの読まないわけがない。表紙をタップした瞬間から、もう降りるべき駅を二回も乗り過ごした。家に着いてからも布団に潜ってそのまま読み続けてしまって、気づいたら深夜2時。明日も仕事なのに。でもいい、後悔はしていない。だってこういうマンガに出会うために、私は今日一日を耐えたんだと思えたから。
今日のユウのため息 ── マウント後輩ユナちゃん ──

…まあ、愚痴はこのへんにして。今日の本題いくわ。
作品情報 ── 雑用付与術師が自分の最強に気付くまで(コミック)

| 作品名 | 雑用付与術師が自分の最強に気付くまで(コミック) |
|---|---|
| 作者 | アラカワシン, 戸倉儚 |
| シリーズ | 雑用付与術師が自分の最強に気付くまで |
| ジャンル | ファンタジー |
要するにこういう話。主人公のヴィムは「付与術師」っていう、味方をサポートする非戦闘員。パーティーの中ではいわゆる雑用係ポジションで、地味に地味にみんなを支えていたんだけど、仲間がピンチになったとき一人で立ち上がって階層主を倒してしまう。すごい。すごいんだけど、ここからが現実の闇みたいな展開で、リーダーのクロノスに「手柄を横取りしやがって」ってブチギレられてパーティーから追放される。……え? 助けたのに? ありがとうじゃなくて追放?
でも捨てる神あれば拾う神あり。幼馴染のハイデマリーがヴィムの実力を見抜いていて、最大手パーティー「夜蜻蛉」への勧誘を受けることに。一行でまとめると、「雑用扱いされていた最強サポーターが、追放をきっかけに本当の居場所と真の力に目覚める話」。ファンタジー版の転職成功物語と言ってもいい。いや、転職エージェントがハイデマリーってこと? 有能すぎるんだけど。
見どころ①:「雑用」の二文字に込められた怨念が深すぎる
この作品で一番刺さるのは、「雑用」という立場の描き方だと思う。あらすじを読む限り、ヴィムは付与術師としてサポートに徹してきた非戦闘員だ。つまり、華やかな戦果を上げるタイプじゃない。縁の下の力持ち。地味だけど必要な仕事をずっとやってきた人間。これ、もう完全に私たち事務職の比喩じゃん。営業が数字を持ってきて、管理職が方針を決めて、私たちは「あとはよろしく」って投げられた仕事を黙々とこなす。それが「雑用」って呼ばれる世界。
そんなヴィムが仲間のピンチに自ら立ち上がって階層主を倒すっていう展開、これがもうたまらない。普段は裏方に徹している人間が、いざというときに底力を見せる。この手のジャンルの王道パターンだとは分かっているんだけど、分かっていても燃える。だって、裏方の人間がちゃんと評価される瞬間を、現実では滅多に見られないから。私が残業して完成させた資料で上司がプレゼン成功しても、褒められるのは上司だし。
さらにえぐいのが、クロノスによる「手柄の横取り」呼ばわりからの追放。助けたのに追放って、理不尽の極みでしょ。でもこの理不尽があるからこそ、その後の展開に期待できる。最大手パーティー「夜蜻蛉」への加入っていう逆転の布石がもう見えている。追放という底辺から、より大きなステージに上がっていくカタルシス。あらすじだけでこんなにワクワクするの、すごくない? タイトルに「自分の最強に気付くまで」って書いてあるんだから、その覚醒の瞬間がどう描かれるのか、もう気になって仕方ない。
見どころ②:ヴィムに自己投影が止まらない、そしてクロノスはタナカ課長
まずヴィムについて語らせてほしい。あらすじを読む限り、この人は自分の能力に無自覚なんだよね。単独で階層主を倒せるほどの実力があるのに、自分では「雑用係」だと思っている。これ、すごく分かる。いや、私は別に最強じゃないんだけど、自分の仕事の価値を自分で低く見積もっちゃう感覚ってあるじゃないですか。「私がやってることなんて誰でもできる」って思いがち。でもたぶん、そうじゃないんだよね。ヴィムを見てると、そう思いたくなる。
そしてクロノス。手柄を横取りされたと激昂してヴィムを追放するリーダー。いるよね、こういう人。部下の成果を自分のものにするくせに、部下が目立つと機嫌が悪くなるタイプ。うちのタナカ課長の顔が浮かんでしまって申し訳ないけど、こういうキャラがいるからこそ追放ものは盛り上がるんだと思う。追放した側が後で「あいつがいないと回らない」って焦る展開、この手のジャンルではお約束だろうけど、何度味わっても気持ちいい予感しかしない。
ハイデマリーの存在もめちゃくちゃ大きい。幼馴染でありながらヴィムの本当の実力を見抜いている人。不当に低く評価されている人間の価値をちゃんと分かってくれる存在。これ、現実だとなかなかいない。私の職場でいうと……ユナちゃんがたまに「ユウさんがいないと困ります」って言ってくれるのが近いかもしれない。あの一言にどれだけ救われてるか。ハイデマリーはきっと、ヴィムにとってのそういう存在なんだろうな。最大手パーティーに引っ張ってくるあたり、ユナちゃんよりだいぶ権力あるけど。
見どころ③:追放→逆転のスカッと感は社畜の点滴
この作品の一番の魅力は、やっぱり「追放からの逆転」というカタルシスだと思う。不当な扱いを受けた人間が、別の場所で正当に評価されて花開く。この構造そのものが、もうスカッとジャパンの異世界版。理不尽に耐えている全ての社畜の魂を浄化してくれるやつ。クロノスみたいな上司の下で腐っていたヴィムが、ハイデマリーに見出されて最大手パーティーに行くって、それもう転職して年収アップしたようなもんでしょ。最高じゃん。
特にこの「付与術師」っていうポジションがいい。攻撃じゃなくてサポート。地味だけど実は超重要。「いなくなって初めて分かる価値」みたいな話は現実にもよくあって、経理の人が辞めた途端に会社が回らなくなるとか、そういうのと同じ構図だと思う。ヴィムが「夜蜻蛉」で力を発揮して、クロノスのパーティーが「あれ……なんかうまくいかない……」ってなる展開が来るとしたら、もうそれだけで白飯おかわりできる。あらすじに「世界は震撼することになる」って書いてあるし、相当派手な逆転劇が待っていそうで震える。
ただまあ、こうやって追放ものの逆転劇でスカッとしても、翌朝起きたら私はまだ事務職で、タナカ課長はまだ課長なんだけどね。ヴィムみたいに「実は最強でした」って覚醒したいけど、私のスキルはExcel関数とコピー機の紙詰まり解消くらいだから、たぶん震撼はしない。でもいいんだ、フィクションでスカッとすることが、現実を生き延びるためのガソリンなんだから。
見どころ④:雑用係の叫びが聞こえるか、全国の事務職たちよ
この作品、「雑用」って言葉に反応してしまう全ての働く人間に読んでほしい。会議の準備、来客のお茶出し、共有フォルダの整理、備品の発注。やって当たり前、やらないと怒られる。でも誰も「ありがとう」とは言わない仕事。ヴィムの「付与術師」はまさにそれのファンタジー版で、サポートに徹して戦闘で目立つことはない。でも本当は、そのサポートがなかったらパーティーは成り立たない。うちの部署も、私がいなかったら来月のタナカ課長の出張申請どうするつもりなの?って話ですよ。
あとこの作品、「自分の最強に気付くまで」っていうタイトルがすごくいい。ヴィムは無自覚に最強だった。私たちだって、もしかしたら今の職場では正当に評価されていないだけで、別の環境に行ったら化けるかもしれない。……まあ、それは希望的観測が過ぎるかもしれないけど、少なくともこのマンガを読んでいる間は「私にも何かあるかも」って思えるんだよね。ミカ先輩に「あんた、転職サイトでも見たら?」って冗談で言われるたびにスルーしてたけど、ヴィムの話を読むと、ちょっとだけその気になる。ちょっとだけね。
ユウの本音まとめ
正直、タイトルを見た瞬間に「あ、これ好きなやつだ」って確信した。追放もの、無自覚最強、サポート職の逆転劇。どれも私が求めていた要素が全部入っている。あらすじを読んだだけでこんなに感情が動くマンガ、なかなかない。ヴィムの「雑用」という立場に自分を重ね、クロノスの理不尽に怒りを覚え、ハイデマリーの存在に救われる。この三段構えの感情の波が、たった一つのあらすじに詰まっている時点でもう勝ちだと思う。
読み進めたら確実に止まらなくなるタイプの作品だし、続きが出たら有給取って読みたいくらいの期待値がある。「世界は震撼することになる」の一文が気になりすぎて、夜更かしが確定した。現実では雑用係のまま明日も出社するけど、せめてこのマンガの中では、正しく評価される世界を見届けたい。ヴィムが最強に気付く瞬間を、私は布団の中でちゃんと見届ける。それが、今の私にできる最高の自己肯定だと思うから。

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